「あーえーっと、そこから動かないで」

「え?」

そう言うと、私より何歩か前に進んで

…振り向かない。

よって今、私には高橋くんの

後ろ姿しか見えてない。

2月の夜7時過ぎ。

後ろ姿も頑張らないと高橋くんだとは

認識できない。

「ど、どーしたの?」

「ふぅ。」

深呼吸、

したけど、どーしたの?

「鈴木さん」

「はい?」

急に真剣に名前を呼ばれると

驚くよね。

しかもさ、後ろ姿がうっすら見えるだけ。

…なんだろう?

「えっと、その好きです。」

「え…?」

デデーン

鈴木夏鈴の思考回路は停止した。

「あ、いや、気持ち悪いの分かってるし
うん、そのなんかごめんなさい。」

「ほ?ん?あ、待って。
謝っちゃだめなやつ!」

「へ?」

「ふぅ。ふぅ。」

とりあえず深呼吸。