両手で顔を覆う。

顔も掌も汗ばんで心地が悪い。



(大丈夫…きっと大丈夫…)





「何してんだ、そんなとこで?」





やにわに背後から声がした。

私の胸が大きく鼓動する。



その声の主が誰かは、顔を見なくたってその声だけで分かった。





(先生!)





合宿以来だからもう3週間ぶりくらいになる。

会いたかった…



学校に自習しに来ていたのも、先生に会えるかもしれない、という気持ちが本音だった。

自分では認めないようにしていたけれど…





「先生は何してんですか?」



会いたかった気持ちを悟られないように、努めて平静を装って先生を振り返る。



「俺?俺は仕事だよ。

お前らは夏休みでも俺は毎日学校来てんの。」

半袖のポロシャツ姿の先生が腕組みをして見下ろしている。



「私も夏休みなんてありません。受験生ですから。

学校も毎日来てます。」

顎を上げて返す。



「んー素晴らしいね!」

英語の先生っぽい表現だな、となんとなく私は思った。