「じゃ南条さんまたね!」

「うん。バイバイ。」

同じクラスの委員の子と廊下で別れ、私は誰も居なくなった廊下で再びスマホを取り出す。



『今終わったよ。これから帰るね!』



清瀬くんへのラインの送信ボタンを押したところで、



パン!



「!」



頭の天辺に軽い衝撃を受ける。



振り返るとそこには…



いつの間にか私の頭上にテキストを掲げる先生がいた。



「せんせ…」

「ほら、スマホ。校内では禁止だよ。しまってしまって。」

「あ…」

私は慌ててそれをスクバの外ポケットに押し込む。



「珍しいね、こんなとこで。何?委員会?」

「…うん。」



ちょっと…気まずい。



「このあと来る?準備室。」



先生の問いにかぶりを振る。



「用事、あって。」

「…そっか。」



少し開いた窓から冷たい空気が流れ込んでくる。

それと共に先生との間にひやりとした間が流れる。



帰ります、と言いかけた時、



「この間の、彼氏?」



先に口を開いたのは先生だった。



胸がどきりと嫌な音をたてる。



何と応えていいか分からなくて口籠っていると、ふっ、と先生が小さく笑う。



「南条は誤魔化すの下手だな。」



いつもと変わらない先生の声。

その穏やかさに胸が疼く。



そりゃそうだよ。

私に彼氏がいたって、先生には取るに足らないことなんだから…