「昴、何よその顔?」

「…何でもねぇよ。」

南条のことも、そのことが顔に出てしまってることも、更にそれを夜璃子に指摘されたことも面白くなくて、ふて腐れた物言いで返す。



「ふぅん。」

「何だよ?」

「好きなんだ?あの子のこと。」

「なっ…!」



(南条は生徒!南条は妹!!)

胸の内で呪文のように繰り返す。



「なわけねぇよ!

言ったろ、南条は妹だから。」



夜璃子がじっと俺を見る。

不審に見えた?俺はなんとなく居ずまいを正す。

夜璃子は見透かすように俺を見つめた後、ゆっくりと口を開く。



「舞奈ちゃんてどんな子なの?」

「え?」



夜璃子の言葉に南条の澄んだ瞳が頭を過る。

『先生!』と俺を呼ぶ透き通った声とストレートの黒髪を揺らして振り返った微笑みが胸を埋める。



「…真面目で…勉強熱心で…優秀で…」



「……」



ぽつりぽつりと話し出す俺の言葉を夜璃子が黙って聞いている。