「舞奈。帰ろう。」



先生の姿が見えなくなった門から眼を離せずにいると清瀬くんが手を引いた。



「あ…うん…」



そうだ、先生は私のことも清瀬くんのことも何とも思ってないんだ。



私はもう先生を追いかけてちゃいけない。

今私が見つめるべきなのは眼の前にいる清瀬くんなんだ。



「…清瀬くん。」



「何?」



私は繋がれた手に力をこめる。



「こうしてて…いい?」



「いいよ。」



清瀬くんが私の手を握り返す。



『大丈夫。舞奈は間違ってねぇよ。』



清瀬くん、私は本当に間違ってないのかな?

私は凄く自分本意で狡い人間だと思うよ?

先生のこと忘れられないのに、今もこんなに心は先生を追い掛けているのに、それなのに貴方に甘えて…



「舞奈は間違ってねぇよ。」



まるで私の心を読んだかのように不意に清瀬くんが言う。

それに私も返す。



「…うん。」


     *  *  *