「…ね、先生。
一番派手なの最後にしよう!」
ポニーテールに束ねた髪をくるんと振れさせて振り返った南条が提案する。
なるほど。
そういう演出、悪くない。
「どれが派手か分かんなくない?
だったらここに時間は書いてあるから、長めなのを後に集めて一斉に火付けるとかは?」
「あ、面白いかも!」
南条と俺は打ち上げ花火をひとつひとつ手に取りながら、どうしたら派手な演出になるか話しながら花火を並べた。
「先生、こっちの方がいいよ!」
蝋燭の灯りの中で南条は満面の笑みを浮かべ、俺を振り仰ぐ。
初めて逢った時より、準備室で再会した時より、今夜の南条は遥かに晴々としている。
実は逢う度にいつも気になっていた。
南条は若々しい輝きを纏う半面、時々どこか大人びた冷めた憂いのようなものを感じることがあった。
再会した時の挑発的な物言いとかがそうだ。
でも今夜の彼女はいきいきとして、青春の輝きを惜しみ無く放っていた。
そして、彼女の放つ煌めきのシャワーを浴びたように、俺もまた今は自身が輝いているように感じた。
最高の演出を考えながら南条と花火を準備するのは本当に楽しかった。
暑ささえも忘れて作業に没頭した。
ここ数ヶ月のうちで俺はこんなに楽しいと思えたことはなかったと思う。
そのくらい久々に胸の底から笑った。

