「それで、相談とは」
直ぐに土方さんが本題を切り出すと三十路近い遊女は隣で白粉を直している遊女に分からないよう私達に耳打ちした。
何でも遊女にも関わらず子供を身ごもってしまったと、その子供を下ろしたくないという相談だった。
何がそんなに問題があるのかが分からない私はキョロキョロと異空間に目を動かしていた
そんな私に土方さんは落ち着けと言わんばかりに肩を叩いた
あとから聞けば遊女は子供を身篭っても大体は堕ろしてしまうらしい
その方法はなんともえげつなく想像しただけで吐き気が出てきた程だ。
商売道具が体だから子供を身篭ると駄目らしい。
「それで、店主から守って欲しいと。」
またこの人は言いにくいことをズバズバと…。
ほら、困ってる!馬鹿正直に大きい声で隣の遊女にバレたらダメなんじゃ。
「はい、すみません。」
そんなことできるわけないと言おうとした土方さんを今朝の土方さんのように遮り「お受けしました」と言ってやったり
勿論、父上には叱られる覚悟も一応ある
そんなこんなで私が1人で初めて、というか同心は本当は依頼なんて聞かないはずなんだろうけど。
放って置けない
だから私は同心として、女として初めての依頼を受けた。