彼は、なにも否定しなかった。 腕を切ることも、食べたら嘔吐することも、不眠も。 握られた手を握り返したら抱き締められた。覚悟を決めていたらしい日を数日跨いで私は彼の彼女になった。 母と父が離婚を選ぶ中学校半ばあたりまで暴力的な父のもとで育った私は、男のひとの手が向くことがこわかった。抱き締められるなんて論外だった。 なのに彼には不思議と安心さえ覚えてしまって。 彼の手は、やさしかった。 “やさしくされる”ってこういうこと。そんな気がした。