「由鶴を離せ」
鋭い声。その迫力に怯んだのか、私を押さえつけていた腕の力が弱まった。けれど起き上がることはできず、私はビルの隙間の地べたに、なすすべもなく縫いつけられたまま。
紅未子は彼女の目の前の男の子に向き直って、静かに言った。
「由鶴を離せ」
このろくでもない集団の中心らしい彼が、品定めするような目つきでうなずく。
「クミちゃんが相手してくれるなら」
「するから、離せ」
紅未子!
ああ、ごめん、青くん。紅未子を守れなかった。
「なにしてくれんの?」
「なんでもするよ」
言うやいなや、紅未子は着ていた大振りのTシャツを、なんのためらいもなく脱ぎ捨てた。タンクトップ姿になった紅未子の肩も腕も透き通るくらい白く、薄暗い路地でそこだけ光を放って見える。
「紅未子、やめて」
私は恐怖も忘れ、全力で拘束から抜け出そうともがいた。さぞ無意味なんだろう、鼻で笑う音が、見えない場所から降ってくる。
紅未子がこちらを振り返って、にこっと笑った。
「私、慣れてるから、大丈夫」
それからふいに真剣な眼差しを見せ。
「由鶴は無事に帰すからね」
鋭い声。その迫力に怯んだのか、私を押さえつけていた腕の力が弱まった。けれど起き上がることはできず、私はビルの隙間の地べたに、なすすべもなく縫いつけられたまま。
紅未子は彼女の目の前の男の子に向き直って、静かに言った。
「由鶴を離せ」
このろくでもない集団の中心らしい彼が、品定めするような目つきでうなずく。
「クミちゃんが相手してくれるなら」
「するから、離せ」
紅未子!
ああ、ごめん、青くん。紅未子を守れなかった。
「なにしてくれんの?」
「なんでもするよ」
言うやいなや、紅未子は着ていた大振りのTシャツを、なんのためらいもなく脱ぎ捨てた。タンクトップ姿になった紅未子の肩も腕も透き通るくらい白く、薄暗い路地でそこだけ光を放って見える。
「紅未子、やめて」
私は恐怖も忘れ、全力で拘束から抜け出そうともがいた。さぞ無意味なんだろう、鼻で笑う音が、見えない場所から降ってくる。
紅未子がこちらを振り返って、にこっと笑った。
「私、慣れてるから、大丈夫」
それからふいに真剣な眼差しを見せ。
「由鶴は無事に帰すからね」



