作家たちの話

家に帰ってからも、あの白い人形が頭から離れません。
昌行君は食事も喉に通りませんでした。

「昌行、どうしたの?全然食べてないけど……」

「うん。今日は食べれない……」

お皿に盛られた美味しそうなおかずを見て言いました。お母さんのお皿にはソースがついているだけでした。

「お菓子食べたの?」

「食べてないよ」

「夏バテかしら……」

お母さんは首をかしげました。
ごちそうさまでしたと言った後、昌行君のお皿はお母さんのところに行きました。

ご飯の後、昌行君はこの嫌な気分を何とかしようと思い、ギャグ漫画を読みました。

漫画の世界に入っている内は、あのことを考えずに済みました。明るくて突飛な世界があの光景を消していきます。
久しぶりに笑った気がしました。

「昌行、お風呂が沸いたわよ」

そんな楽しい時間も終わりました。重い足取りでお風呂場に向かいます。

最近一人で入るようになったばかりでした。普通の日でも少し怖いのに……。こんな日は逃げ出したくなります。

それでも、お母さんに怒られるのは嫌だし、いじめられるのも嫌なので入りました。

体を洗った後、シャンプーに手を伸ばしました。そこでピタリと止まりました。

昌行君は頭を洗う時、目を瞑ってしまいます。その間に何かあったら……。

見えない間は逃げだすことが出来ません。目を瞑ったまま脱衣所に出るのは危険です。

目にかからないよう工夫してシャワーを浴びました。何度もお湯を手で拭いました。

もうこれでいいかな?
昌行君は元の所に戻しました。


ふふっ……ふふふ……。


ピチョン、ピチョンと雫が落ちる中、不気味な笑い声が聞こえました。

「ひぃ……い、嫌だぁ」

昌行君は体を竦めました。

外に出ようとしましたが、黒い人影が見えました。

外に出られない……。去るのを待つしかありません。

「お母さん……助けて……」

後退りすると、背中に冷たい物が当たりました。
鏡です。

もう後ろには下がれません。お母さんを呼ぶにはドアを開けなければいけません。

ドアを開けるときに風呂桶を投げて、入ってこないようにしようと考えました。

風呂桶にはお湯がはられていました。持ち上げて、お湯を流そうとしましたが……。

「ぎゃー!」

お湯に、顔を白い布で隠した人が映っていました。