それから十数年が経った。

事故となったまま、信一は責任を問われることなく成長した。あの事故の二年後、弟が生まれた。

弟夫婦が子供を授かり、時々子供の面倒を見ることがあった。

「おにい……おじさんの言うことは聞くんだよ」

「うん」

信一は姪の初音を抱き上げた。

「今日は公園に行こう!大きい公園だぞ~!」

「やったー!」

車に乗せ、少し遠くの大型自然公園に連れて行った。

砂場で遊んだり、滑り台で遊んだり、知らない子とも鬼ごっこをしていた。
鬼ごっこが終わったら、それぞれ親のところに戻った。

「お弁当食べよー」

「そうか、もうお昼か……」

袋から取り出し、ここでレジャーシートを広げようとしたが、初音はスタスタと歩いていった。

「初音ー!どこに行くんだー!」

返事も振り返ることもなく、ひたすら前に進む。仕方なく、信一は初音を追いかけた。

初音は柵がある方に向かっていく。

「おーい!そこは危ないぞー!」

信一は初音の後ろに立つ。危険と書かれた看板の向こうは崖になっている。

「綺麗なお花……」

「そうだな。でも、危ないから見るだけだぞ。柵にもたれるのも危ないから……」

「お兄ちゃんも、今度は落としちゃ駄目だよ」

こっちに振り向いて言った。その時の声も顔も、妹にそっくりだった。