作家たちの話

とうとう自分は意識も身体もふらふらとしてきました。そして、地面に倒れ込もうとした時、誰かに支えられた。

「君、大丈夫か?」

知らないおじさんでした。薄く目を開けて見ると、自分よりずっと背の高い、黒いコートを着た人でした。

「家はどこ?」

知らない人に住所を教えるなと言われていましたが、悪い人ではなさそうだし、早く帰りたかったので教えました。

「そうか。少し失礼するよ」

おじさんはそう言って、自分を抱きかかえました。重くないのかな?と思いましたが自分一人で歩けないのでこのままにします。

近くに人がいると暖かくて安心します。眠たくなってコートに顔を埋めました。柔軟剤の香りがします。

もうすぐ眠りそうなところで、家に着き、自分を降ろしました。その時少しだけ顔が見えました。

整った眉、切れ長の目、睫毛で隠れて見え辛かったのですが目の色は灰色でした。黒い髪に雪がついていて、そのままにしていたら濡れてしまうと思いました。

「もう、無茶はするなよ」

その時に見た笑顔と薄い唇が印象に残りました。

「あんた、いつの間に外に出てるの!?」

お母さんが勢いよくドアを開けました。目を見開いて怒鳴るので怖かった。さっきのおじさんとは正反対でした。

「あっ、おじさんにお礼言わないと!」

「おじさん?」

「えっ見てないの?」

後ろを見ると、おじさんはもういなくなっていました。足跡も見えません。こんなすぐに、気付かれずに去って行くなんて……不思議に思いました。

おじさんが誰だったのかは分かりませんでしたが、今度会ったらお礼が言いたいと思い続けています。