「おじいちゃん」
私のお母さんは体が弱く、入院することも多かった。
その度に私は他の家に行ったり、家事は自分でしていた。

お父さんは借金を残して離婚した。

お母さんが絶対に見つからなさそうなところに隠しても、お父さんはお金を見つけて勝手に使った。

夜逃げすることもあった。家賃が安いところを転々として、転校も多かった。

ある日、霊能者が来ることになった。
病気になりやすいから視てもらうことになったらしい。

そう勧めたのが誰かは知らない。霊能者に頼むのはどうかと思う。

そして、霊能者が家に来た。特に変わったところはない、普通の人だ。

皆集められて、霊能者が祈っている間座っていた。

すると、変化があった。
少し温かい感じがする。

誰かの声が聞こえる……。


直感で、おじいちゃんだと思った。

「笑加……お父さんが苦労させてすまんな……。おじいちゃんは笑加のことを見守っているよ……」

そんなことを言っていた気がする。
私は目が潤んできた。


やがてお祈りが終わり、霊能者が話す。

「包丁を持ってきてください」

言われた通り、お母さんは包丁を持ってきた。それを渡すと……。


グサッ!

人形を刺した。

私は硬直した。

その人形は韓国の親戚がお土産に買ってきたもので、夜見るときはちょっと怖かったけど、特に悪い感じはなかった。普通の人形のはずだ。

「これが原因です。この人形は後で川に流してください」

霊よりも、人形よりも、この人の方が怖かった。
その後、人形は川に流された。


あれから大人になって、私も大人になり、娘にこの話をした。

娘……曾孫も大きくなりました。
病気がちだったお母さんは、高血圧気味だけど元気です。