「今日は久々にいいものを見れたよ」

学習机に向かい、カッターナイフを器用に回しながら呟きました。

小学校五年生の男の子は、可愛らしい笑みを浮かべていました。

男の子は下校途中、よろよろと歩く猫を見つけました。
怪我をしているの?それとも病気?男の子は猫を正面から見ました。

猫の目は、真っ白でした。全体が白目のようになっている訳ではありません。白く濁っている訳でもありません。

大量の寄生虫が目全体を覆うように蠢いていたのです。

男の子は恍惚とした表情で手を伸ばします。手は傷だらけで、まだ新しいものもあります。

彼は血や肉が大好きでした。最初は自分の体を傷付けて満足していましたが、もっと大きなものをみたいと思うようになりました。

深爪した指で、寄生虫が蠢く目をつつきました。白くて小さい寄生虫がポロポロと落ちました。
男の子の体が二回ほど大きく震えました。

他の人からすれば気持ち悪い光景。これが見たかったのです。
軽く引っ掻くように、指を細かく動かしました。もっと近づき、ポロポロと落ちる寄生虫を踏みつけました。

男の子はもうそろそろ楽にしてあげようと思いました。
後ろにまわり、猫の首を絞めました。

しかし、鋭い歯の間から苦しそうな声がもれるだけです。

仕方なく、彼は転がっていた瓶で殴りました。
猫は倒れ、動かなくなりました。

こんなことをするのは今回が初めてではありませんでした。

もう少し見ていたかったのですが、他の小学生の声が聞こえてきたので見つからないように逃げました。


家に帰ってからも、猫の事を考えていました。
首を絞めた時の感触や寄生虫、殴った時に流れた血。鮮明に覚えています。

男の子はさっきから指が痛くなっていました。指を切ったからかな?と思いましたが、いつも以上に痛かったのです。


指を見てみると、傷口がパックリと裂け中から寄生虫がこぼれました。

「うわああああ!」

驚いて手を激しく振りました。寄生虫はそこらじゅうにとびました。

痛みはどんどん強くなっていきます。男の子は寄生虫が蠢く皮膚を削ぎました。
寄生虫は別の傷にもわいていました。今も肉を食い進んでいきます。

今まで見たこともない、大きな傷です。激痛に悶えながら興奮しました。
あの時の猫のように倒れ、指を眺めます。

寄生虫が手首の血管を食い破ったようです。大量の血が流れます。カーペットに染み込みました。

男の子は、出血多量で死にました。
次の日、どの番組でも寄生虫の事を取り上げました。

寄生虫は外国から来たものです。あの寄生虫の卵が傷口に入ると、その日の内に孵ります。そして、宿主の体を食い進んでいくのです……。

運よく助かった人は、血管を食い破られなかった人や、すぐに救急車を呼んだ人です。

死体や得体のしれない虫に触ってはいけませんよ。