「白い目の黒猫」
その黒猫は、道で倒れていました。最初に発見したのは帰宅途中のサラリーマンでした。

動物が好きだった彼は、家に帰って大きいビニール袋を持ってきました。

裏山に埋めよう。そう思い、ビニール袋で包みます。
でも、裏山だと掘り返されるかもしれない。

どうすればいいのかわからなくなって、その人は保健所に電話しました。

電話に出た職員は、最初に猫の目を確認してほしいと言いました。

猫の目は真っ白でした。
仕事の後で目が疲れていても、これくらいはわかります。死体はあまり見たくなかったので、すぐに目をそらしました。

「真っ白です」

「わかりました、すぐに職員を向かわせます。あなたは猫に触っていませんか?」

「触って……?ビニール袋で包みましたが……」

触った内に入るかもしれないので一応言っておきます。

「……あなたの体に傷はありませんか?」

猫ではなくて何故自分のことを教えなければいけないんだ?と思いました。

ありません、と答えました。

「わかりました。大丈夫だと思いますが、体に異変がありましたらすぐに連絡してください。待っている間、絶対に猫に触らないでください」

電話を切り、職員が来るのを待ちました。
車が来て、職員が降りてきます。

「どこか痛いところはありませんか?」

「いえ、ありませんが……」

また自分のことを聞かれました。
職員は光を当て猫の目を見ると、すぐに車の中に運んでいきます。

「今日の事は明日の朝まで他の方に言わないでください」

そう伝えてから、車はここから去っていった。
彼は疲れていたのですぐに帰りました。