作家たちの話

この話を聞いた四年生の女子がトイレに入った。この四年生はいじめられていて、死ぬためにトイレに入った。

「青い壁がいい?緑の壁がいい?」

「青」

青で死ねるかは分からないが、緑では死ねない。
上を見ろと言われて見上げると、青い何かが降ってきた。顔に乗っかり、視界は青に占拠された。

それは、青いゼリーだった。小さい容器で、フタは透明。近所のスーパーで売られているゼリーの詰め合わせのものだった。

そういえば、妹の誕生日だったな。一個あげよう。


ある五年生は、習字の日に墨が無くなっていることに気付く。借りると馬鹿にされるかもしれないので借りたくなかった。
トイレの話を思い出し、もし黒がでてきたら墨をもらえるかもしれないと考えた。

硯をもってトイレに入る。

「黒い壁がいい?白い壁がいい?」

黒が出るとは本当に運がいいと思った。この時を待っていたのだ。

「黒!」

硯を壁にぴったりとつけて待つ。すると、上から黒い液体が流れてきた。
硯を満たした墨を見て狂喜乱舞する。しかし、墨にしては異様なにおいがする。


このにおいは、イカスミだ!

五年生は、イカスミで習字の時間を乗りきった。

このような話が広まると、あのトイレに入る人も増えた。

「ちょっと聞いて!」

ある日、早苗たちにトイレの話をした峰風 朝子(みねかぜ あさこ)が、慌てて教室に戻ってきた。

「どうしたの?」

「あのね……あざみちゃんがトイレに入ったらね、緑しか聞かれなかったの。仕方ないから緑を選んだら、目にわさびを落とされたって……」

朝子の話を聞いて周りは爆笑した。

「何それ、緑一択とか地獄じゃん!」

緑でひどい目にあった早苗が笑いながら言う。

「怖くないの!?」

「さっきの話の何が怖いのよ?」

鏡子が訊くと、少し間をおいて答えた。

「もしも、赤一択になったら……」

赤を選べば死ぬ。赤しか選べなかったら……

次の休み時間、トイレの扉に使用禁止という張り紙を張り、この話を校内に拡散した。

先生もこの騒ぎを知って、トイレの扉を壊し、使用禁止にした。