作家たちの話

「線路を見るまで」
錦 優香(にしき ゆうか)はホームで電車を待っていた。
駅構内放送が流れたが、自分が乗る電車ではなかったため引き続きスマホの画面を見る。

電車が近づいてきた。その時、誰かがすぐ近くを走り過ぎた。急いでいるのかなとしか思わなかった。


顔を上げると、その人はパッとホームから消えていた。警笛が鳴ったあと、嫌な音がした。


風邪で早退してきたらしい、制服を着た女子中学生とその親がパニックになっていた。ある男性は駅員を呼びに行こうとする。

ホーム、電車に血が飛び散っている。
血の臭いがして気持ち悪くなり、優香はその場を離れようとした。しかし足に力が入らず、結局椅子にもたれることになった。
震える手で電話をかける。


「もしもし……莉子、ごめんね……ランチ行けない……」

電車も遅れる、そして何も食べれないので断ることにした。弱々しい声で何とか伝えることができた。

「えっ行けないって……」

「人身事故があってね……電車も遅れるし……何も食べれないから……」

莉子はわかった、お大事にと言って電話を切った。
我慢の限界なので、落ちそうになりながら階段を駆け下りた。