「窓の外の親子」

太平洋戦争が終わり、日本は連合国軍に占領された。
夜、とある基地で三人の軍人が休んでいた。コーヒーを飲んで椅子にもたれ、他愛無い話をしていた。

「なあ、知ってるか?この前スティーブンが幽霊を見たって……」

「知ってるよ。日本軍の兵士のだろ?」

「そう。それでさ……」

ジェームズが間を置く。トーマスとマークはその先が気になって仕方が無い。

「昨日、ザッザッて足音が聞こえたんだよ」

「見たのか?」

トーマスが聞くと、ジェームズは目を逸らした。

「……見てねーよ。寝る時間だったし……」

小さな声で言った。見てないと言ったら臆病だと思われるかもしれないので、恥ずかしかったからだ。

ジェームズは、この前まで戦争していた国の兵士を面白半分で見たくなかった。

窓の外を見ないようにして、毛布を頭からかぶっていた。
このことは絶対に知られるわけにはいかない。

「何だよ……今日もいるかもしれないな」

「まさか……見ようとしてるんじゃないだろうな?」

「そのまさかだ」

トーマスがニヤリと笑う。ジェームズは勘弁してくれよと思った。彼らが終戦を知らなければ敵だと思って襲ってくるかもしれない。

「やめろよ」

マークがそう言った。マークは日本軍との戦闘を経験したことがあった。命のやり取りをした彼らの幽霊を面白半分で見ようとするのは許せなかった。

「じゃあ、俺とジェームズだけで見るよ」

トーマスはそう言って肩に手を置いてくる。断りたい。しかし、断れない。
結局、トーマスは右側の窓を見張ることになった。