夜の洋館は電気が点いていないと不気味だ。夜十二時頃、綺麗な照明の下でそれぞれ自由に過ごしていた。

「もう十二時か。高時、もう寝ろ。背伸びないぞ」

「成長は緩やかになったのでもういいです……」

ソファに寝転がり、ページをめくりながら答える。

「夜更かしは肌荒れの原因よ」

「私にはそう言いながら皆さんは起きるんでしょ……」

高時は椿森の方を向いて半目で言った。半目のままじーっと見られ、椿森が何も言えなくなっていると、高郷が廊下から走って来た。

「どうした高郷」

「見つけたんです!これ!」

高郷の手には薄汚れたランプがあった。この古い洋館にあった物が使えるのかどうかも怪しい。

「これがどうしたんだよ」

高郷がランプを点ける。


「これで、怖い話しませんか?」

ランプを掲げ、目を輝かせて言った。

「嫌だよ。何でわざわざこんなところで……」

石蔓は怖い話が苦手だった。夏でもないのにやるというのも意味がわからない。

「……幽霊がいるかいないか、確かめたくないですか?」

高郷が怪しく笑う。すると、それほど興味が無さそうにしていた島矢が食いついた。

「面白そうだ。やってみよう」

椅子から立ち上がり、高郷の側に来る。島矢のスイッチは何で入るか分からない。意外なものでやる気が出たりするのだ。

「確かに、気になるな」

椿森もやる気になったようだ。

「わっ私も……」

本を置いて高時も来ようとする。

「お前は来るな!」

石蔓の声が響く。高時はビクッとした後、立ち止まる。

石蔓は、事件のことを心配していた。あの日、高時以外の全員が出かけることになった。それを知った高時が残ってほしいと言った。

しかし、島矢は先に行って、石蔓達も洋館を出て、最後まで残っていた椿森も玄関に向かう。
鍵が閉められ、椿森は歩きだそうとした。

その時、高時は尋常じゃないくらい怯えていた。

開けて下さい!開けて!死んじゃう!奴が来る!

ドアを叩き、泣き叫ぶ。時折ガリガリと何かを引っかく音がする。先に出ていた石蔓達にも高時の声は聞こえていた。

椿森は友達に今日は行けないと連絡をして、洋館に残ることにした。

よく考えれば女子高校生だけを残して出るなんて危険だと思った石蔓達もすぐにキャンセルし、洋館に戻る。
すると、高時は少し落ち着いた。

「大丈夫です。今の状態を変えたいんです」

何かを決意したような表情で高時が言う。怖い話で何を決意したのかは分からないが、結局五人ですることになった。