「白い人の顔」
高校一年生になって、眼鏡をかけ始めた。
視力はDで、黒板の文字も見えなくなっていたのに今まで我慢していた。友達のノートを写させて貰ったり、休み時間に黒板に近づいて写したり……。

それでもなんとか志望校に合格した。

お母さんが、高校生になったら留年があるんだから、成績が落ちないように眼鏡をかけなさいと言った。

眼鏡をかけると、ガリ勉だとか暗い子だとか、変なイメージを持たれると思っていたからかけたくなかった。

けど、おしゃれな物もあるし、イメージなんか後から変えられる!と力説されたのでかけることになった。

眼鏡屋さんには、眼鏡の選び方の紙も貼られていた。それを参考にしながら、気に入る物を見つけることができた。

鏡を見ると、何だ、悪くないじゃんと思った。
暗くなんかない。良い眼鏡を選べたな。

かけたまま帰ろうとしたら、まだ慣れていないせいか頭が痛くなった。
ちぇっ。仕方ない、歩くときは外そう。

目の前に何かがあるというのはわかるので、眼鏡がなくても問題なく歩ける。
ほら、向こうに白い服を来た人が座っている。僕は避けようとした。

何かぶつぶつ言っている?
気になって立ち止まった。

耳をすませて聞いてみる。

「呪ってやる……呪ってやる……」

聞くんじゃなかった。気持ちが一気に落ち込んだ。

そして、眼鏡をかけてなくてよかった。
かけていれば、恐ろしい顔を見てしまっただろう。

「そこのお前ぇ……呪ってやるぅ!」

「ひぃっ!」

僕は一目散に逃げた。
どうしよう!神様助けて!


男の子はぼやけて幽霊の顔がわからなかった様だ。

顔の説明をすると、黒豆をのせたような目で、鼻は無い。髪は生えていない。
ニコニコと楽しそうに、呪ってやると繰り返していたのだった。

交通事故で自分の顔の記憶を失い、こんな顔になったらしい。
驚かすことができ、満足したこの霊は上へ旅立っていった。