作家たちの話

走りにくい靴を履く清乃は、小さい体を活かして曲がり角で差をひらく子供に追い付けない。

少し目を離すと見失いそうになる。瞬きが命取りになるほどの素早さだ。
見つけた!と思ったらすぐに消え、待ちなさいと言っても振り向きさえしない。

清乃は息が切れ、膝に手をついた。しかし急に止まるのは良くないことを思いだし、フラフラと歩いた。

ペンキの臭いが残る白い廊下に、ヒールの音が響いた。

冷静になって、新校舎を土足で走ってしまったことに気付き冷や汗をかく。

大人が校舎に侵入し、その上土足で走った。見つかったときはどう説明するの?

清乃は靴を脱ぎ、周囲に気を付けて歩き出した。先生が見えたら見つからないように逃げよう。

早く指輪を取り戻して、この校舎から出たい。
そう思った時、教室に影があった。振り向いて、暗い教室に佇む黒い人を見る。

真っ黒な長い髪で、長いまつげが影をおとす。俯いていた少女は、ちらりと清乃の方を見た。

少女が机を突き飛ばす勢いでドアに向かった。
清乃は待ち構え、捕まえようとした。

「清乃!?」

敦の声が聞こえた。

「敦、なんでここに!?」

「いや、新しい校舎を見ていくことにしたんだけど……。清乃はどうしたんだよ。靴なんか持って」

清乃と違って、敦はスリッパを履いている。

「その……盗られた」

「何を?」

怒られるかもしれないと思ったが、正直に言うことにした。こうなったら敦にも協力してもらう。

「指輪」

「え……!?」

「この校舎にいる、髪の長い女の子。素早いから注意して!」

「ああ……って、どういうことだよ!?」

スタスタと歩き始めた清乃の後ろから聞く。

「よくわからないけど、横を通って盗っていったのよ!事情は捕まえてから聞く!」

そして、清乃と敦は別れて探すことにした。