桜庭くんは「俺小さい字見ると頭痛くなるんだよね〜」と笑いながら話す。 カチャッ もういい。 この人のことは視界から消そう。 突然私の前に現れて、こんな風に私の至福の時間を奪う人なんか。 私は、心の中でため息をついてから今度こそ目線を本に戻す。 だんだんと、視界の端がぼやけて本の中の場面がそこに広がる。 (戻ってこれた) そう思った時だった。 …? 生暖かい柔らかい何かが、私の唇に触れた。