「…庭……桜庭…?」
「あっ、はいっ!」
名前を呼ばれ、ハッとして自分がぼーっとしていたことに気づく。
「なんだー?そんなぼーっとして。恋か?」
伊達がからかうようにそういう。
「そーかもしれないっすね」
いつものように得意の嘘の笑顔でそう返すと、
クラスの女子たちが一斉にざわざわし出す。
いつもなら、計算づくのその空気を軽く流すはずなのに。
俺はまた、席の離れた紫月を見つめる。
彼女は俺のことなんて見ていなくて、窓の外に顔を向けていた。
今の声を。
彼女は聞こえていただろうか。
どう思っただろうか。
なんて。
らしくないこと思う。



