一匹少女が落ちるまで



「…玲奈がっ」


頭の中で繰り返し再生される理央とのドキドキする思い出を振り払うかのように、私はとっさに声を出す。



「城ヶ崎?がどうかした?」


「…夏休み、お泊り会しよって。私そういうの初めてだから、今から緊張してて」


「へぇー良かったじゃん。恋バナとかするんでしょ?女子は男よりエグいって聞くから怖いな〜」


「…恋バナ」


「城ヶ崎に山岡のことどう思ってるのか聞いたらいいよ。山岡、あれはすげぇ惚れてるぞ〜」


「そうなんだ…うん。聞いて見る」


恋バナか…。

理央はすごい。

話すだけで、なんだか心が落ち着いた。

1人じゃないってことを、感じることができる。


「夏休み、楽しみだな」

理央が笑ってそう言ってくれる。

私の大好きな笑顔で。


「…うん」

理央とみんなと過ごす夏休み。
1番ワクワクしてるなんて思われたくない。
はしゃいでるなんてバレたくない。


気持ちを隠そうとするなんて、私らしくないのは自分がよく分かってるけど。


彼に恋をしてしまったのだから、もう遅い。



「紫月はさ…」


「…?」



「…ううん。やっぱりなんでもない。ただメガネ外してもその冷めた性格だからそう簡単にはできないよな、彼氏と思っただけ」


「ほんっと、邪魔です理央。関係ないでしょ」


「ごめん怒んないで冗談だもん」


「可愛く言っても許しません」



理央だけだから。

こんな風にムキになっちゃうのは。

あなただけには、いいと思われたいって願望があるからだよ。



今この瞬間あなたの一部が私に触れてることだけでも、こんなに嬉しいと思えるのだから。