一匹少女が落ちるまで



「理央…」


そうだ。
今日はいつもと少し違ったんだ。


「ん?」


「ううん。なんでもない。園子は学校どうだったの?」



「私ー?あ、世界史の授業でめっちゃ爆睡してたらハゲタニに怒られた!ねぇ、教科書でバシンッてすっごい強く叩かれたんだけどさ、ここ、たんこぶできてない?ちょっと見てくれる?紫月」


園子が思い出したように慌てて私に頭を見せようとキッチンに向かってきた。



「影谷先生でしょ?」


私はひどいあだ名で担任のことを呼ぶ園子にそうしっかり訂正する。


影谷先生には一度、園子の学校の体育祭に行った時に挨拶したことがあるから覚えている。