一匹少女が落ちるまで



「雨宮さんのお母さん、昔から優しい人なの?」


私は、記憶を辿って家にいるお母さんを思い出す。


最近話したのはいつだったっけ…。



「…気がついたら、両親が共働きで家にいなくてコミュニケーションとらないことが当たり前になっていたので…」


「そうなんだ…。働き者なんだね、雨宮さんのご両親」


「子供が4人いたらそれなりに働かないといけないみたい」


「えーー!!雨宮さん、兄弟いるの?!」


新山さんがすごく前のめりになって聞いてくる。


「い、いますけど」



「いいな〜〜!!私一人っ子だから、兄弟とかすっごく羨ましくって!」


目の前で目を輝かせて話す新山さんは、クラスにいるときの彼女と同一人物とは思えない。


城ヶ崎さんたちと同じグループだったから、私のことは城ヶ崎さんと同じように嫌いなんだと思っていたから。


記念館で助けてくれたことも、わざわざ班のメンバーにお礼を言ったのも、今ここで楽しそうに話しているのも。



なんだか、ずっと縛られていた身体を解放されたかのように新山さんが何かから解かれたように見える。