遠くから、見覚えのある人がいる。

ん?あれは...咲良君!?

私はとっさに持っていた本で顔を隠した。

しかし、見つかってしまった。

「おはよう!少し探しちゃった。なに読んでるの?」

「これは...」

私が読んでいる本は恋愛小説だ。

これを見せたら、なんて言われるんだろう。

「ごめんなさい。見せられないの。」

「そっか。あのね、どんなものが好きなのか知りたくて、聞いちゃった。ごめんね」

「いや。こちらこそごめんなさい。」

2人で喋っていた声が大きくて、他の乗客の人に、すごく睨まれていたことに気づき、そそくさと逃げた。

幸せなんだ。楽しいんだ。

私は好きなんだ。

咲良君の事が。