冬の訪れ[短編]

 本当にずるい男だ。

 目を合わせないことが彼のわずかな罪悪感の表れなのだろうか。

 それだけが唯一の救いかもしれない。

「彼ね他に彼女がたみたい」

「そんなことって」

「いいの。諦めついたから。じゃあ、デートを楽しんでね。容子と田村くん」

 恭子は精一杯の笑顔を浮かべた。

 きちんと笑えただろうか。そう自分に問いかける。

 でも、きっと笑えたと思った。

 恭子は二人に視線を向けずに歩き出した。

 冷たい風が恭子の傍を駆け抜けていく。

 思わず肩を抱いた。

 先ほどまで待っていた雪が勢いを増し、もっと強く吹きしきる。

 さっきまで見えていた町並みが舞い降りる雪によって霞んで見えた。

 これから寒い季節が訪れようとしていた。

                                     《完》