「参ったな……」 緒方科長は私の上で溜息をついた後、ゆっくりとベッドに腰を下ろした。 私ははだけた胸元に手を置きながら体を起こした。 今までの緊迫した空気が、ゆっくりとどこかへ消えていく。 「緒方科長……?」 長い沈黙の後、両手で顔を覆い背中を丸めている緒方科長に後ろから声をかけた。 「まさかあんなガキにおまえを奪われるなんてな……」 悲しそうに呟く緒方科長の声には、なぜか嬉しさのような笑みが含まれていた。 ゆっくりと振り向いた緒方科長の眼差しは、怖いものではなかった。