「どうして俺じゃなきゃいやなの?」


「僕……あんまり人と話すのが得意じゃないし、
吉田先生だったら、なんか安心する」


「話すのが得意じゃないって?
嘘だろー。
さっきあんなに大きな声で自分の気持ち言ってたのに?」



陸君に安心してほしくて、俺はわざと笑ってみせた。


大丈夫だよ。

どんなに話すことが不器用でも、ここの理学療法士は陸君の気持ちをわかってくれる。



「それに、緒方先生は俺なんかよりずっと頼りになる先生だよ。
なんてったって俺のリハビリをしてくれてる人なんだから」



少しの沈黙の後、陸君が目を大きく見開き布団から顔を出した。


俺を頭のてっぺんから足先まで見下ろし、床にある松葉杖に目を向ける。



「先生……」


「俺も陸君と同じだよ。
だから一緒に頑張ろうって言っただろ?」





真っ黒な大きい瞳の陸君。

涙の跡が残っている陸君が、うっすらと微笑み俺に言った。



「僕、先生も怪我をしてるなんて全然気づかなかった」


「そりゃそうだろ。布団から顔出してくれないんだから」


「ううん、そうじゃなくて……」