「おまえって凄いよ。
実習生だったくせに科長の俺にあんなこと言えるなんて」


「凄くなんかないです。
後先考えずに行動しちゃっただけなんで」



苦笑いの俺に、緒方科長が優しく微笑んだ。



「おまえにとって一番大切な人って誰なんだろうな……。
その人がいるからリハビリも、夢も諦めずに頑張れるんだろ?」



緒方科長の言葉に、胸がギュッと掴まれたように痛んだ。



俺にとって一番大切な人……?



大切な人ならたくさんいる。


親父や理学療法士の仲間たち。

高校時代の友達。

大学の仲間。

今まで出会った患者さんたち。


順位なんてつけられないよ。



だけど、咄嗟に俺の頭に浮かんだのは……。