「緒方科長、俺って科長の負担になってませんか?」


「負担?」


「余計な仕事を増やしてるっていうか……
なんだか申し訳なくて」



少し下を向いて話す俺の頭を、緒方科長がスパーンッと叩いた。


「俺はおまえのリハビリを仕事だと思ってやってない」



平行棒に掴まり立っている俺は、目を丸くした。


「俺は、おまえに恩を返してるだけだ」




恩……?

緒方科長が俺に恩を返すことなんて……
俺、何もしてないよ?



「おまえ、俺に言ってくれただろ。
『一番大切な人は誰ですか? 』って……。
あの言葉に俺と女房、中嶋は救われたんだよ」



あの一言で……?


たしかに言ったけど、

俺の中ではそんな恩を売ったつもりで言ったわけじゃなかった。


あの時はただ

これ以上中嶋先生の悲しい瞳を見ていられなかったから……。