小学5年から男手一つで俺を育ててくれた親父。

どんなに心配かけただろう……。



プリンを手渡す親父の手は、少し震えていた。




「おいしい」


「そうかぁ、おいしいか。じゃあもっと買ってくるな!」


「え? 一個でいいよ」



俺の声が聞こえてなかったのか、親父はそのまま何も持たずに行ってしまった。




本当においしい。

こんなにおいしいプリンは初めてだった。



足が動かない現実は変わってないのに、そのプリンの味がほんの少し俺の心を和らげてくれた。



俺は、きっとこのプリンの味を一生忘れないと思う。


そして、慌ててプリンを買いに走った親父の背中も。