「棗くん、君のおかげだ、ありがとう」


お父さんは、私を抱きしめたまま、棗くんに視線を向ける。

「いえ、俺は何も……」

「謙遜するな、美羽が出て行った後、きみが喝を入れてくれたおかげだからな」


……え??

棗くんが、お父さんに喝を……?

驚いて棗くんを見ると、棗くんは小さく笑いながら肩をすくめた。


「もともと、2人はお互いのことを想っていたってだけですよ。俺の力じゃないです」

「棗くん……ううん、棗くんのおかげです」


だって、棗くんは私の背中を押してくれた。

そして、私がいない所でお父さんの背中も……。


「棗くんがいなかったら今……お父さんとこうして笑顔を交わすことなんて出来なかったと思います」


「美羽……」

「本当に……本当に、ありがとう……っ」


泣き笑いになったのは、嬉しすぎて感極まったから。

決して悲しいからじゃない。