で、その犬飼くんの夢に、あたしが登場したと。

さっきの平安時代の夢の話からいくと、あたしが犬飼くんのことを好きだと。

そういうふうに、犬飼くんは解釈したわけ?


…………いやいやいや。

ないないない。

100%ない。


ってか、そんなこと言われてもこっちだって困るんですけど。

どんな返事してほしいわけ?


正解の分からないあたしは、とりあえず笑ってごまかすという結論に行き着いた。


「あっ、あはは~。へえ、そんなんだ~。あは、あははっ」


奥ゆかしいあたしは、「あんたバカか!」と返すこともできず、とりあえず笑って受け流すことにしたのだ。


犬飼くんはまだにんまりしながら、あたしのほうを見ている。


「俺、なんで夏木さんの夢なんか見たんだろうって、すごく不思議に思ったんだけど。先生の話きいて、納得しちゃった~」


――――きもい!!

きもいきもいきもい!!


失礼だとは自覚してるけど、でもやっぱりキモいっ!!


あたしはがばっと立ち上がり、


「へえ~、不思議なこともあるもんだね~」


と適当な相づちを投げかけ、教室から飛び出した。


「わっ、どうしたの莉緒!」


ドアから出たところで渚にぶつかりかけて、あたしは足を止めた。


「………なぎさぁーっ!!」


あたしは勢いのまま親友に泣きついた。