「え?」


「一ノ瀬くんと羽矢川くんだよ」


「あ……」


見ると紗英が指さした先には、昨日の夜に、屋上でいっしょに星を見た顔があった。


もう一人の背の高い男子といっしょに、バスケをしている。


あの人は確か一ノ瀬くんと同じくらい有名な人で、羽矢川涼くんだっけ……?


「あれ、相手バスケ部だよ! すごい、ぜんぜん負けてないじゃん」


「ほんとだ、すごい」


「近く行って応援しようよ」


「うん」


校庭にあるバスケットのコートに走り寄る。


一ノ瀬くんは大活躍だった。


広いコートの中を縦横無尽に走り回って、相手方を翻弄している。


そこまで身長が高いっていうわけでもないのに、びっくりするくらい高く跳んでダンクシュートをきめている。


すごいな……私なんて、レイアップもろくにできないのに。


その時、一ノ瀬くんと目が合った。


「……っ」


驚いて思わず目を逸らしてしまう。


知り合ったっていっても、夜の屋上でほんの一時間くらいいっしょにいただけだし、もしかしたら私のことなんて覚えてないかもしれない。


 だけど。


「あ……」


一ノ瀬くんは、私に気付くと、笑って手を振ってくれた。


「梨沙、昴くんと友達だったの?」


「え? あ、う、うん、友達っていうか……」


「えー、すごいすごい! あとで紹介してよ!」


紗英が声を上げる。


私はもう、覚えてくれていたことと、手を振ってくれたことだけで、いっぱいいっぱいだった。


覚えてて、くれたんだ……


そのことが、すごく、うれしかった。