「昴……!」


やっぱり、昴はここにいた。


ここにいたんだ……!


矢も楯もたまらず駆け出す。


昴しか見えなかった。


昴のことしか目に入ってなかった。


「あ、梨沙!」


だから私は気付いていなかった。


目の前に、暗闇に紛れて足下に張り出した木の根があったことに。


「危ない……!」


ドン、と押されて、その勢いで木の根に足をとられるすんでのところで止まる。


「あ、ありがとう……」


だけど、紗英が怪我をしてしまったようだった。


木の根に引っかけたのか、スネのところから血が出ている。