「っ…ぁ、あっそー」
じわじわと視界がぼやける。
何かがせり上がってくる感覚。
泣いたら、ダメだ…。
見られないように背中を向ける。
「別に…何も期待なんてしてなかったしっ…
う、自惚れないでよねっ…!」
違う…違う…。
嘘よ…
震えた声は静かな空間に響いた。
「……そ。お互い同じでよかったな」
なにか言い返してやりたくて振り向いた。
涙を見られてもいい。
泣いてんのかよってバカにされてもいい。
笑われてもいい。
伝えたかった…
好きな事、
待っていた事、
会えて嬉しかった事、
でも、やっぱり何も言えなかった。
「…っ…馬鹿っ!」
その瞬間涙が流れていた事に気がついて
逃げるように走って校舎を出た。

