「なぁ、数学のノート見して」



「へっ…」


休み時間をぼーっと過ごしていた私に声をかけてきたのは統夜だった。



「ノート」



「…あ、うん」



机の中から取り出して渡す。




がやがやとうるさい教室なのに




文字を書く音がやけに聞こる気がする。




「…はぁ」



今日は朝から玲が休んでいるみたい。



いつも待ち合わせしている訳じゃないけど



いつもの曲がり角で会うと一緒に登校する




まぁ、いつも会うんだけどね…。




私って、玲以外友達居ないんだなぁ…



まぁその方が楽だしいいけど。




「なぁ、やんの?」




ノートを写しながら聞いてくる統夜。



「…なにが?」



話の脈絡なさ過ぎなのは、昔から変わってないみたい。




「体育祭実行委員…次の授業で決めるだろ?」



「えっそうなの!?」



うっそー…玲いないのに最悪だよぉ



「聞いてねぇの?クラスで話題になってっけど」



「聞いてない」



私も統夜を見ずに黒板を見つめながら話す。




…誰に話してんだろ…私。



「だよな。お前友達いなそうだもんな」



そして統夜も誰と話してんの…



いや、明らかに私だよね。



その話題は。



「別にいいじゃない」



「お友達、欲しいんじゃねぇの?」



ふっと鼻で笑ったように言う統夜。




絶対バカにしてる!!




「俺がなってやるよ」




「は…?」




いつの間にか私の方を向いていた統夜は



書いていたペンを肘をつきながら私に向けた




「だぁからー友達、俺がなってやるって」




本当は統夜が話しかけてくれて、


嬉しかった。




あの頃みたいに仲良くなれるって




そう思ったから。



でも、統夜のその言葉でそんな期待も吹き飛んでしまった。



「統夜なんかと、友達になりたくない」



そこでチャイムがなり、言ってしまった気まづさから逃げられた。



「…ノート返すわ」



バンっと勢いよく置いた統夜。



その音にチラチラと何人かの視線を背中に受けながらノートを手に取る。




何よ、貸してもらって「ありがとう」もないなんて…





統夜、こんな人じゃなかった…。




ドSで意地悪で、でも凄く優しくて




いつも笑ってくれて、大好きなはずなのに。




ふと、窓から見えた空は


厚い雲で覆われていた…。