「転入生紹介するぞー」



そんな軽い先生の口調から


今日は始まった。


一気にザワつく教室。


…まぁ、そうだよね


二学年の5月に転入生なんて


タイミングが悪いもん。



きっと来るのは昨日のあの人だ。




私の左隣の席が空いているから、きっとここなのかな…?



仲良くできるかな〜



でも男子は玲以外とほとんど話した事ないんだよなぁ…



転校生と仲良くなろう作戦をたてていた私の目に映った転入生。




その人を見た瞬間息を飲んだ。



机に突っ伏して顔を隠す。


……何故か懐かしさを感じていた。



って、なにが何故かよ!


ばりばり本人じゃん!!?



「…美月 統夜-Toya Mです」



素っ気ない自己紹介が聞こえる。



「じゃあ〜美月の席はあそこだな!」



周り、見えないし…見れないし…




自分でもすごく動揺しているのがわかる。



きっと顔に出やすい私の事だし



動揺してるのバレちゃう…



「…よろしくな、優華」



声をかけられて、仕方なく顔をあげる。



最初から無視とか感じ悪いじゃん?



転入生と仲良くなる作戦崩壊しちゃう…って



転入生が統夜の時点であれはなしよ!!



統夜が、隣の席…。


目が合った。


息が止まるかと思った。



「……っ統夜、」



呼びたくなんて無いのに



真っ先に出た声は名前を呼んでいて、


震えていた。



どうして…?



10年間1度も帰ってこなかった統夜が、このタイミングで?




嬉しいけど、接し方も分からないし…帰ってきて欲しいとは思っていたけど、あの日の約束を統夜は忘れてるのかな…?




姿を見たら見たで、質問ばかりが浮かんでくる。




(えっ…優華ちゃんと知り合いなの?)




(カッコイイと思ったのにぃー…残念)



そんな女子達の小声が次々に聞こえてきた。



って、聞こえてるんだから

小声じゃないじゃん!




いつも通りに進む授業だけど、



私はちっとも集中できなかった。



こんな事で余裕がなくなる私には


玲の視線にすら気づけなかった…。