―――こわい。

どうしよう………。


ごくり、と喉が鳴った。

そのとき。


「………俺が見ててやるから」


佐藤が、突然、あたしの手を握って、囁くようにそう言った。


初対面の男にいきなり手を握られたんだけど、不思議と嫌な感じはしなかった。

それは、その触れ方が、とても優しかったからかもしれない。

にっと笑った佐藤の目も、やわらかく細められていて、すごく優しかった。


「…………うん。かけてみる」


あたしは頷いて、ユウジの番号をタップした。

もしかしたら、ユウジは出てくれないかもしれない、って思ったけど。


《………もしもし、楓?》


久しぶりのユウジの声だった。


かえで、とあたしの名前を呼ぶ、大好きだったユウジの低い声。

きゅう、と胸が締めつけられるような気持ちになった。


「………急に、ごめんね。いま大丈夫?」

《あぁ、うん………大丈夫》


ユウジはやっぱり、こんな時にも優しかった。


あたしはユウジの優しいところが好きだった。

見た目もかっこよくて、好みだったけど。

大学の学科が同じで、ときどき話すくらいの間柄だったときから、何よりも、やわらかい物腰と優しい笑顔に夢中だった。

少しずつ距離が縮まって、ユウジから「付き合おっか」って言われたときは、泣きそうなくらい嬉しかった。


あたしは6年も前からユウジ一筋だったのだ。