―――うん、無理だ。

やっぱ無理だ。

ぜったい無理だ。

もう耐えられない。


死のう。

死んじゃおう。

死んで、きらきら光る夜空のお星さまになろう。


そう決心して、あたしはベランダの手すりによじ登り、腰かけた。


地上15階のマンションのベランダからは、ずいぶん遠くまで見渡せる。


びゅうっと吹き上げてくる、冬の夜の冷たい風。

都会の明るい夜空の下に、数え切れないほどの人工的な明かりが煌めいていた。


―――まあまあ綺麗じゃないの。


これが、あたしの人生の最後の瞬間。

あたしの目に映る最後の景色。


………うん、悪くない。


あたしは妙に清々しい気分で、ゆっくりと宙に身を乗り出した。


そのとき。



「おい、そこのアホ」


……………ん?

今、なんか、声がしたような………。


あたしは思わず、体勢を立て直し、手すりをぎゅっと握りしめた。

そして、きょろきょろと首を巡らせて、声の主を探す。


でも、あたしの視界に映るのは、大都会の明るすぎる夜景だけ。


「…………?」


じゃあ、いったい誰の声だろう。

もしかして、天国からあたしを迎えにきた天使?

もしくは死神か。


そんな馬鹿なことを考えていたら。


「おいクソバカ、下だ下」

「………はい?」