「えっ?」


「2月末の展示会で、新商品出すだろ?


どっちがいいもん出せるか、勝負な」


「いえ、御社と弊社では、勝負になりませんから」


「そんなの、やってみなきゃわかんないじゃん。


みたとこ、おまえもそこそこ力ありそうだし。


普段やってる仕事も似てるしな」


そう言われて、本田さんの名刺を思い出した。


たしか、開発部課長だったはず。


まだ若そうなのに、『課長補佐』や『課長代理』じゃないなんてすごいって、素直に思った。


開発部主任にすぎない私に、どうしろっていうんだろう。


「どうして、私の勤務先をご存知なんですか?」


「金曜のプレゼンで、おまえの連れが持ってた紙袋に社名が書いてあったから」


男って、そんなとこばっかり見てるんだろうか。


「お名刺、いただけますか?」


本田さんは、妙な低姿勢で頼んできたので、いつもの癖で渡してしまった。