仁奈は顔を赤くさせ、ぐったりと脱力するように頭を垂れた。

仁奈が言おうとするところは、分からなくもない。

初めての、彼氏がいるクリスマス。

確かに、ふたりきりでイルミネーションの綺麗な街に出かけるのも楽しそうだとは思うけど……。


「おい、このは」


うなだれる仁奈を、どうしようかと見ていたら、教室の入口で名前を呼ばれた。


「翼!先生からの説教終わった?」

「説教じゃねーっつの。日直の仕事だ、バカ。帰るぞ」

「はーい。じゃあね、仁奈。デート楽しんでね」


翼に促され、あたしは仁奈に手を振って入口に向かった。

仁奈はまだ納得のいかないような表情で、それでも手を振り返してくれた。