無糖バニラ【番外編】

「……」

「……」


何も喋らなくなっちゃった。

嫌いじゃないけど。
こんな空気も、翼と一緒なら。


冷えた手のひらを口元に当てて、自分の息で暖める。

すると、無言で片手を握られて、翼はそのまま自分のコートのポケットにあたしの手ごと入れた。


暖かい。
握られているのは片手だけなのに、全部。

正面を向いて、街並みを眺める。

ここからの景色は、いつも変わらない。

だけど、今日は。


「いいね、クリスマスって特別だなぁ」

「まぁ……、そうだよな」

「翼も?もしかしてあたしと同じ?」


パッと明るく返すと、少し驚いた表情が返ってきた。