愛を込めて極北

 「私、白井百合(しらい ゆり)。リブラン社の社長は、私の父です。そして暁は、私の婚約者」


 婚約者……?


 「百合!」


 気まずい表情で、楠木が副社長を止める。


 「別に隠す必要もないでしょ」


 副社長は意に介さない様子で、私たちのテーブルを去り、主催者たちが集う前方のテーブルへと移動した。


 当然のことのように……。


 「美花ちゃん、帰りお茶していかない?」


 同じテーブルの事務所関係者が、私を不思議そうな目で見るので困っていた。


 副社長に私が事実上の宣戦布告をしてきたことに、みんなうっすらと気づいてしまっている。


 ということはつまり……私と楠木の間に何かあったんじゃないかってことになる。


 しかし直接聞くにも聞けず、内心あれこれと各自想像を巡らしているのだろう。


 さすがに響さんは見て見ぬふりはできなかったようで、ここでは人目もあるということで帰りにお茶しようと提案してきたようだ。