愛を込めて極北

 そして私ははっとした。


 この方と楠木が恋人関係ならば。


 私とのことは……浮気?


 「……」


 自分のしたことを、今になって後悔する。


 そんなつもりじゃなかった。


 少なくともあの時点では、私は恋人の存在を知らなかったし。


 楠木も恋人の存在を、みんなに一度も……。


 ……みんなに?


 いやもしかしたら、みんなは実は知っていたとか?


 知らなかったのは私だけ?


 他人に知れたら非難されるようなことをしてしまった手前、一気に罪悪感に包まれた。


 もしこの副社長に知れたら……?


 内心恐怖心に震えていると、


 「いつも暁がお世話になりまして」


 にこやかな表情で、副社長が私に告げた。


 私だけに向けて。


 普通だったらそのような挨拶は、事務所関係者全員に向けてなされるべきのところ、副社長は私だけに告げたのだった。


 ……もしかして、私と楠木のことを勘付いている?


 不吉な予感に間違いないような気がして恐ろしかった。