愛を込めて極北

 「暁、来ちゃった」


 真っ先に副社長すなわち社長令嬢は、楠木のほうへと歩いてきた。


 周囲の人たちが、突然のリブラン社副社長登場に慌てふためいているのも意に介せず、彼女の目には楠木しか映っていないがごとく。


 「どうして……。要件なら先日東京本社で」


 「あれだけで充分なわけないじゃない」


 副社長は甘えた目で楠木を見つめる。


 「……今はイベント最中だから、詳しい話はまた後で」


 「終わったら、待ってるから」


 そして副社長は、近くにいた響さんに気が付いて挨拶してきた。


 「久しぶりです。間もなくご結婚と伺いましたが……。改めてお祝いさせていただきますね」


 響さんと副社長は、面識があった。


 以前から楠木の活動を通じて、知り合っていたのだろう。


 そして……。


 「こちらのお嬢さんは?」


 「あ、新しく事務所でお手伝いさせていただいてる、桜坂さんです」


 響さんが私を副社長に紹介したので、私も頭を下げた。


 「はじめまして」


 「こちらこそはじめまして。そう、あなたが……」


 副社長は何かを考えるような雰囲気で私を見ていた。


 まさか楠木が私とのことを恋人に喋ったりするわけはないだろうけど、どことなく気にかかった。