愛を込めて極北

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 ……次に楠木に会ったのは、十日以上経ってからのことだった。


 あの夜、一夜のハプニングの直後、楠木は東京へと旅立ち一週間くらい不在。


 夏に控えた極北旅行に関するスポンサーとの話し合いがあるとかで、長期間にわたる東京滞在だった。


 その間音沙汰なし。


 携帯の電話番号もアドレスも、緊急連絡先として登録してはいるものの。


 元より緊急時以外は連絡を取り合うこともなく、プライベートな交流をしたこともなかった。


 一線を越えたからって急に対応を変えることもできず、向こうがどのような対応をしてくるか、それを見てどうするか考えようと思っていたのだけど。


 連絡はなかった。


 私のほうも、一度したからって馴れ馴れしく連絡をするのもためらわれ、どうしたらいいのか分からず、ただ様子見を続けるだけ。


 十日ほどして楠木は東京から戻り、それに合わせて受賞記念パーティーが急遽開催された。


 ちょっと前に楠木の旅行記が、ノンフィクション関連部門で受賞したのを記念してだった。