愛を込めて極北

 「……試してみる?」


 何を試すのか聞き返したかったところだけど、この位置関係ではまるでそのような余裕を持てず、


 「い、いえ。結構です。帰ります」


 一刻も早く、この状況を脱しなくては。


 とりあえず体を離そう。


 掴まれた腕を振りほどこうとちょっと動かしたところ、ますます強く押さえ込まれた。


 「すみません、離してください。帰らなきゃ……」


 「そんなに嫌?」


 「え……」


 「俺じゃ嫌?」


 「……」


 何と答えるべきかとっさには思い浮かばず、しばらく黙り込んでしまった。


 「だったら、別にいいんじゃない?」


 軽々しく一言そう言い放ち、苦笑した後、距離を詰めてきた。



 もしかしてさっきの沈黙は、OKの証と捉えられたのかもしれない。


 ソファーの上は狭いし部屋の中が寒いとかで、程なく楠木の部屋に場を変えたのだけど、そのあたりの過程はよく覚えていない。


 そのまま私たちは……。